コラム「ミズアオイから見る環境再生」

新潟市海老ヶ瀬地内(大形工区)にある農業用小排水路に昨年9月、突如ミズアオイが芽を出しました。このことは新聞でも取り上げられ、地元の方の話を聞くと、昔からこの地域にあったとのことですが、コナギ(ミズアオイと比較するとやや小ぶりな水生植物で繁殖力が強いため排水路の雑草として認識されている)などとも紛らわしい植物であるため、ここではあえて突如という表現をすることにします。

絶滅が心配されているこの植物の特徴は、その名の通り水辺に鮮やかな青い花をつけることが挙げられますが、海老ヶ瀬地区に咲いたミズアオイの花々は、その数もさることながら一つ一つの花の大きさも見事であり、周囲に集まった農業関係者や新聞報道を見て訪れた人々を驚かせていました。

大形地区地域用水対策協議会ならびに資源保全実態調査事業にご協力いただいている海老ヶ瀬分区ではこの植物を見守っていこうと、現在、観察や採種などの保全活動を展開しています。

亀田郷内には様々な種の天然植物が数多く見られ、その中にはミズアオイのような希少植物も少なからず存在します。自然淘汰の中で自然環境は変化を繰り返しながら現在の姿になったのでしょうが、生き残っている植物の中にはかつてはその土地になかったような外来種も少なくありません。

今ある姿が一番良い。そういった意見も聞かれます。しかし、自然が今あるままの姿でいるためには、少なからず人の手を入れ、周辺の環境に気を配ることで初めて実現できるのではないかと考えます。里山の荒廃が進んでいるということが取り沙汰されて久しくなりましたが、これらも原因をかんがえてみれば山村での高齢化に伴う手当不足が主因であり、今後、かつて農村部ではあたりまえに集落で管理されていた共有地が荒廃していく姿が想像されます。ミズアオイがなぜこのタイミングで花を咲かせたのかはわかりませんが、亀田郷の環境再生は、郷内に暮らしている皆さんの協力が重要な鍵をにぎっています。


ミズアオイ
ミズアオイ
〔国・新潟県により絶滅危惧U類
(:絶滅の危機が増大している種)に指定されている〕

ミズアオイが自生した水路

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